つながる想い

お大師様の残されたお言葉の中にこの様なお言葉があります。

身は華と与に落ちぬれども、心は香と将に飛ぶ 『性霊集』

(みは、はなとともに おちぬれども、こころはこうとともにとぶ)

現代語訳

人は亡くなれば、その身は朽ち果ててしまうけれど、その心はかぐわしき薫りとなって  広大無辺の世界へと広がっていく。

このお大師様のみ教えは、咲いた花が散るように、私達の肉体もいつか朽ち果ててしまいますが、花が散った後にもその花の素晴らしき香りが記憶に残る様に、人の生き様や心意気は、残された人々の心に生き続けることを私達に示しております。

私は、このお大師様の言葉から新聞の投稿欄で見た、とあるおばあさん、娘さん、お孫さんの話を思い出しました。そのおばあさんは、料理上手で、結婚前は自分のお店を持ちたいと考えていましたが、結婚後は家庭に入り自営業をされていたご主人さんを内助の功で支えられた方でした。おばあさんには、大切にしていた得意料理のレシピがあり、長年その料理で家族を支え、幸せな食卓を作っていました。その料理は、おばあさんの娘さんの好物でもあり誕生日など記念日には必ず作ってもらう特別な思い出の味でした。そして、その娘さんには、結婚して女の子が誕生しました。娘さんが女の子を連れて帰省してきた時には、おばあさんは必ずその得意料理を作りました。時には成長したお孫さんと一緒に料理を作り、  お孫さんにとっても幸せな思い出となりました。

晩年、おばあさんが亡くなった後、そのレシピは娘さん、お孫さんへ受け継がれました。  お孫さんの思い出の中で「自分の作った料理で皆が喜んでいる顔を見るのが一番幸せだよ。」とおばあさんが言っていた言葉、昔はお店を開きたいと思っていたと口にする、姿が強く 印象に残っていました。

料理好きだったおばあさんの姿を見ていたお孫さんは、料理に興味を持ち、調理師専門学校に通い、飲食店で勤務された後、念願であったご自身のお店を開かれ、今ではおばあさんの得意料理のレシピをアレンジしたお食事を提供されているそうです。お孫さんは、料理を 通じてお客さん、家族や友人たちが喜ぶ顔を見ることで、おばあさんの姿がよみがえり、  レシピが単なる手順ではなく「家族の大切な思い出」として、今でも自分自身の中で、おばあさんの姿が生き続けていることや感謝の言葉が綴られていました。

今ある私達の命には、様々な人々の願いや想いが込められています。今、この一瞬を大切に過ごすことで頂いた命が輝き、その姿は次の世代の人々に受け継がれ心の中で生き続けていきます。

担当:林義将

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